電話 長野の山荘に 長女と孫二人を連れていた。三年前の初秋であった。谷側の辺(ほとり) 林の下で孫たちは楽しく 飛び回った。小学校3年と 1年の男の子。この子たちの父は 前の年の夏 突然死んだ。孫たちは なくなったパパのことを口に出さない。前の年には パパの運転する車で、この山荘に来たのだ。孫たちの胸の中には パパと遊んだ前の年のことが 頻(しき)りに 思い出されているはずなのに、一言もパパのことを言わない。小さな胸の奥に かかくなにしまいが込んでいる。それが 痛ましい。
翌日、長女の友達が やはり男の子をつれて 大阪から来て、合流した。3人の男の子たちは 一日中 秋の日を浴びた 遊んでいた。にぎやかな夕食が終わって、子供たちは 元気に 家の中を飛び回った。新しい流行のおもちゃを出して、それに熱中した。大阪から 電話がかかってきた。長女の友達のご主人からだった。大阪の子は 電話に飛びついて、パパと話していた。山の中で 今日一日遊んだことを 弾(はず)んだ声で話していた。電話が終わった時、それまで じっと聞いていた一年ぼうの孫は 俯(うつむ)いたまま ぽつんと一言 “うえのパパからは 電話が来ない”と言った。
私はその時の長女の胸の中を思い、何も言えず つらかった。意外にも 長女は 飛びきいた明るい声で “こっちから電話してごらんよ。ぱぱに”と言った。“電話番号を知らないもん。”“105にかけて聞いてごらん。天国の電話番号は何番ですか”って。孫の顔に一瞬 緊張が走った。孫はその時 耳の奥に ぱぱの声を聞いていたに違いない。室内が しんとした。少しして、孫は 嫌だよと言って、急いで遊びの中に入っていた。びんびんとなるフォーロビ声の中で、みんなそれぞれの思いに沈んだ。
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